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□青春の一ページ
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少し前を歩く君。
太陽は俺等を容赦なく照りつけすべてのものを焼きこがしそうだ。
僕はその太陽を抗うように睨み付ける。


……目が痛い

『退。目ん玉、目玉焼きにしたいのか?どんな鋼鉄な目玉を持っているのかおまえ』

所詮俺なんざに太陽なんて勝てる訳もなく、半熟焼け気味の目玉に思わず瞼を閉じた。



瞼を静かに閉じるとちらちらと光が走った。
真っ黒くろすけが見える。

やっぱり君の言う通りだ。太陽との戦いの結果
目玉焼きになる事がわかった。


閉じていた瞳を再び開き辺りを見回した。


なんだか君がいないような気がして不安になった。


『さーがるッ』


「…へ?」


『へ?じゃないよ。海に来て何浮かない顔してんのよ』


「こんな糞暑くて萎れ死んでしまいそうな日にどうしてそんなに元気にいられるの?」

『そりゃ、海に来たらはしゃぐもんじゃない?海なんて青春の代名詞じゃない?』

そう言って白いワンピースの裾の端を摘み波打ち際を子供みたいに走り廻る。 君は知らないだろうけどこの時期になると僕は嬉しくて堪らないけど何処か憂鬱で仕方がない。
だってさ。
今日が終わって明日がくる。明日が今日になって明後日がやってくる。明後日が今日になれば君とサヨナラになる。あっと言う間さ。

わかる?この気持ち。
サザエさんのエンディングテーマを見る気分なんだよま、君にすりゃ、僕との一日はそれほど日曜の夜の気分じゃないかもしれないけど。
もしかしたら、君は僕といる一日をどうでもいい木曜日な感じで過ごしているのかもしれない。


結局そんなんだ。
いつもそうさ。
それが僕なんだ。


「あのさ〜木曜日の事とか覚えてる?」


『木曜日?……忘れた』


「やっぱり」


『だってさ、木曜日って週の真ん中もっこり。意外と印象薄くて覚えてないよね』


「あのさ…、嫁入り前の女の子が真ん中もっこりとかやめた方がいいよ…」


『あ、そうなの?』


「あ、そうなの?じゃないよ…」


『……でもいいやっ!』


「は?何で?」


『相変わらずだよね。鈍感男』


鈍感男って…。
悲しくないか?
私結婚するからそんな事言ってもいいの。
そうでも言いたい訳?
そういうストレートな所が君らしいよ。


俺たち付き合い結構長いのにそんな話しすら聞いてなかった。


「……ごめん」
君に新しい彼氏が出来たんだ。


『何が?わかってる?意味』

「……彼氏…だろ?」


『そうだよ』


そうか。最近、連絡が少なくなったのは。


「そっか。……ごめん。…鈍くてさ。ははは」


力なく笑う僕に君が柄にもなく照れたように俯く。



俺は照れている君の姿を拝めただけでも僕は嬉しいよ。
……嬉しくて
……嬉しくて
仕方がない



なのに俺の心臓は痛いぐらい鼓動を打ち、音の無い世界へと引き摺り込むようだった。



『…さがるなら…いいよ』

ザザアッ……


二人の間に高い波が引き寄せる。
そして俺の足元に波がまとわり付くと、再び波の音と共に消えて行った。


「……だね」


って…どういう事?
退っていったよね。


「え?」

『…退。キスしようか』


そう言い君の顔が近づいたと思った瞬間、唇に柔らかい感触が広がる。


君の甘い香りが広がった。




『青春ごっこも飽きたしさ。そろそろ結婚でもしない?』


「ええええええっっっ!!」




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